自分はモテると勘違いしたほうが良い。なぜなら勘違いから生まれるドラマがあるから。

「どうして武豊はあんなにキャーキャー女性に言われてるのに俺は・・・(涙)」

20数年前の若い頃、大きな疑問をもったことがあります。私よりも4歳年上の武豊。その当時彼は、日本中央競馬会の騎手として、史上最年少で100勝達成、200勝達成、300勝達成とスポーツ新聞を賑わし、その甘いマスクで女性から「キャーキャー」言われていました。

私はテレビで見る彼のその姿に、「あれっ俺に似てないか?」と思うようになっていたのです。なぜなら共通点があったからです。若干のたれ目で、人から優しそうと良く言われていたからです。

天才ジョッキー武豊。

男前とは言われたことがない私。

やはり似ているだけでは、モテる要素にはならないものなのか?そんな悲しみに暮れていたある日の出来事です。私は大阪の経理の専門学校に通っていました。

その学校でボーリング大会があり、その道中、仲の良かったA君と一緒に歩いていた時の事でした。後ろから女子二人組のひそひそ話が聞こえてきました。

「ねぇねぇあの人、武豊にどことなく似てない?」

「え?そうかな?」

「いや、どことなくだけどね」

その声色は明らかに黄色かったのです。「き・・・キター」私は心の中で叫びました。ちなみに私は耳がめちゃくちゃいいです。地獄耳です。その黄色い声からは、「あーーーん、似てる。素敵。かっこいいー」そんな感じが伝わってきました。

自分の事を言われていると感づき喜ぶ私

「間違いない。俺の事だ」と思いました。

そして横にいてたA君もそれに気づいたようで、「何か後ろで言ってるな?」という感じでチラっと彼女達を見ました。

「おいおい見るなよ。俺のファンの女の子だぞ」と心の中で思いました。A君が感づいたのを知ったのか声のボリュームを下げ出した彼女達の話し声は何を言ってるのか分からなくなりました。

A君がチラっと後ろを見るという余計なことをしたからです。しかし、私のことを何か言っているようには聞こえたのです。人生でもてた経験のなかった私。

やっと私の魅力に気付いたのか?

それにしてもコソコソと話す女の子だなと思いました。

「恥ずかしがり屋さんなんだな。ははは・・・」

とモテ出したこと?で急に強気になる私

期待と不安とプライドで一杯になりました

二人のうち、明らかに黄色い声を出していた彼女は、同じクラスで、一回だけ隣りの席になって話しをしたことがある子でした。

この出来事があるまで、彼女はノーマークでした。目が細く、ほっぺたが膨らんだ感じの彼女は、お多福タイプの平安美人でした。話しかけやすいタイプですが、個人的には、女性としての魅力をあまり感じていなかったのです。

しかし、この黄色い声の出来事から彼女のことが気になって仕方がなくなった私は、どんどん平安美人の魅力にとりつかれていったのです。

良く見れば可愛いです。

というよりも、見るほどに可愛く見えてきました。 現代の可愛いとされる女の子よりも歴史的な裏付けのある可愛さだと思うようになりました。

もう気持ちは抑えられません。自ら行動に移さなければ愛をゲットすることなんて出来ないのです。しかし、彼女は休み時間、他の女の子たちといつもおしゃべりをしていました。

つまり、そこに割って入るのは抵抗がありました。じゃあ電話ならいけるかも?彼女が以前に大阪市の○○区に住んでいると言うことを聞いていました。

彼女はとても珍しい名字でした。

その区にある電話ボックスにある分厚い電話帳を開くとその名字の家は一軒だけでした。「き・・・キター、間違いない」ドキドキする気持ちを抑えながら電話するかしないか悩むこと1時間。

恥ずかしさが上回りその日は帰宅しました。次の日、また電話ボックスに行ったのですが、心臓がドキドキで、ビビりまくりでした。

その緊張を解きほぐすように周囲を走り回り、心拍数をあげることでなんとか勢いをつけ、「もう、どうにでもなれ」そんな気持ちでついにダイヤルを回してしまいました。

「ハイ○○です」彼女に似た声が聞こえました。でも、これは家の固定電話です。

「すみません。○○専門学校の熊と申します。○○今日子さんはおられますか?」

「お友達の方ですか?」

「ハイ、そうです」

「今日子~~お友達よ~男の子からよ~」

どうやらお母さんでした。今の若い子はこんな経験はあまりないと思います。携帯電話が普及する前の時代です。昔は女の子の家に電話をしてお父さんやお母さんが先に出るというドキドキがあったものです。

「もしもし」 だるそうな彼女の声が聞こえました。

勢いよく、「あっ俺、俺、分かる?」

「え?誰ですか?」

「熊です」

「え?どうしたの?」

私は昨日、必死で彼女とどんな話で盛り上がるかを書いた紙を見ながら会話をすすめていきました。20分ほどでしょうか?なかなかいい感触でした。つまり彼女も私との話を楽しんでくれたようでした。

しかし、目的は電話ではありません。

その先の第一歩です。デートです。私は数日置いて再度電話をしました。相変わらずメモを必死で見ながら、いかにも自然にしゃべってるぜ俺的なオーラをだしつつです。

そして自然な流れで「いやー自分と話してたら時間がなんぼあっても足りんわ。とりあえず今度大阪でぶらぶらする?」すると「ええよ」見事に約束を取り付けました。

大阪の難波駅で待ち合わせ。当日現れたのは、ジーンズ姿の平安美人。現代では需要は少ないかもしれないのですが、時代を越えた美しさです。昔の殿様が見たらきっと悔しがるでしょう。

「千年前なら僕は殿様だ」

しかし、緊張が嬉しさを上回りました。

しかも、人生初のデート。さらにノープランです。本当にぶらぶら歩くだけのデートになったのです。

心斎橋筋商店街を終点まで歩き、また戻ってくる。途中ゲーセンによったり、雑貨屋に寄ったりはしたけれど、いまいち盛り上がりませんでした。

しかも、用意していた話のネタがつきて、会話がなくぶらぶら歩く二人。戎橋筋商店街から心斎橋筋商店街の往復散歩が終わりかけの時、彼女は一言・・・

「もう、そろそろ帰らない?」

反論する力はありませんでした。

完全に負けです、やはり、ノープランは駄目です。次は目的を決めて誘おう。映画なんかどうだろう?と思い、後日彼女の家に電話をしました。

しかし、彼女の声は暗いのです。恐らくこの前のデートががっかりだったのでしょう。それでも勇気をだして

「次はめっちゃ面白い所あるねん」

すると、「えーー、次はみんなで遊びに行こうよ。私、二人よりも、みんなでワイワイする方が好きな方だから・・・」と、やんわりと拒否されました。

しかし、武豊に似ているということで好意をもってくれた女の子をそう簡単にあきらめてたまるかと思い、「俺ってタレ目だけど、武豊ほどなのかな?」冗談っぽく聞きました。すると・・・・

「えっ?何それ?武豊って言えばA君が似てると思うよ」

どうりで、騎乗の依頼がなかったわけです。青春時代はいつも手探りの面白さがありました。だからこそ、その思い出は光り輝くのでしょう。

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