「この仕事大好きなんですよ」と言っていた従業員がうつ病になった理由に考えさせられる

忙しい・・・でも頑張る分だけ活躍出来る(汗)

私の職場は食品スーパーです。この職場は学歴も過去の経験もさほど問われることなく、やる気さえあれば、ほとんどの人が活躍できる場所だと思います。

体が千切れそうな忙しさに耐えられる人は活躍出来るでしょう。

しかし私は、誰もが活躍出来る世界と、スポーツや芸能界のように頑張っても、ほんのひと握りの人しか活躍出来ない世界では・・・

同じ活躍をするにしても目立ち方が違うと感じます。

誰もが活躍しやすい場所であったとしても、自分が置かれた場所で頑張ることに人生の意義があると人は納得しがちですが、置かれた場所の現実を知った上で頑張らないと、その頑張りは、逆に自分を苦しめる結果になると知った出来事がありました。それは・・・

「僕はこの仕事大好きなんですよ」と言った男の話

随分前のことで、もう彼のことを、話題にする会社の仲間はいなくなりましたが、私は彼のことを忘れません。彼はある大手のスーパーで店長を経験したことのある男で、そのノウハウを引っ提げてうちに中途入社してきました。

とても仕事に対してガツガツしているという評判のはりきり君でした。そのはりきり君は入社してわずか1年ほどで店長を任され、しかも、その店の前年比の売り上げを大幅にUPさせ会社から注目をあびました。

特に会社が注目をしたのは彼の売り場作りのノウハウです。 

センスがあるのはもちろんのこと、きちんと数字を分析して、他のスーパーの売り場も参考にしながらの理論立てられた彼の売り場作りはまさに、売れる売り場でした。

そんなはりきり君は店長であるにも関わらず、本部の上司から他の店にも「あなたのノウハウを教えてあげなさい」と言われ、売上が低迷している店を中心に他店を回ることになりました。

うちの店にもはりきり君は来て、売り場の改善を一緒にしてくれました。その時彼は私に・・・

「熊さんはこの仕事好きですか?」  と聞いてきました。

私は社交辞令で「好きですよ」と答えました。

すると彼に「あーー良かった。実は、僕はこの仕事が大好きなんですよ。やっぱり仕事というものは好きと言う気持ちから始めるのが一番だと僕は思うんですよね。だから熊さんがこの仕事を好きといったその気持ちは忘れないでくださいね」

と目を輝かせながら言われました。うちの会社は、あまりの忙しさにうんざりしている社員がほとんどの中で彼のはりきった言葉はとても新鮮に耳に入ってきました。

ところがその数ヵ月後、その当時の店長から、はりきり君が会社を辞めたことを聞かされました。原因はうつ病です。

「あいつ鬱病らしいですよ」

ビックリしました。あれほどやる気に満ち溢れていたハリキリ君が・・・???「僕はこの仕事が大好きなんです」と言っていた彼が・・・??理解に苦しみました。

店長の話によると、「あいつは可哀想な奴だ」ということでした。 

どういうことかというと、自分の店の数字も維持しながら、本部から他店の改善も見るように言われて、それでもガツガツした姿勢を崩さなかったはりきり君はついに・・・

自分の器以上の仕事を抱え込みすぎて気がおかしくなったそうです

退社する前の彼の表情を店長は見たそうですが、顔が死んでいるようだったそうです。そんなはりきり君に、私はある日、町で偶然に会いました。

久しぶりの再会に嬉しくなった私は・・・

私 「元気ですか?」
彼 「いや元気じゃないです」
私 「頑張って元気になってくださいね」

すると・・・

「僕の病気は頑張って治るものじゃないんですけど・・・」

うっかり、彼がうつ病だったってことを忘れていました(汗)精神的に参っている人に「がんばれ」はさらに精神的に追い込むそうです。久しぶりの再会に嬉しくなってついつい言ってしまいました・・・反省しています。

それはともかく、彼に今は何をしているのか聞くと「派遣の仕事をしている」と答えてくれました。「え?まじか?」と思いました。「もったいないだろ?」と思ったのです。

売れる売り場作りの能力があるのだから、正規雇用でどこかの小売業の会社にいったらいいのに?

と思いましたが、そこは突っ込まないでおきました。

そんな彼との再会を思い出し今思うことは・・・

頑張っても、そう簡単に活躍出来ない場所では、自分をアピールしても、そう簡単にチャンスはもらえません。なぜならみんながチャンスを欲しがっているからです。

しかし、だれでもそれなりに簡単に活躍出来る世界では、いくらでもチャンスが与えられることが多いでしょう。

なぜなら多くの同僚が仕事を抱え込み、「勘弁してよ」と心で泣いているからです。つまり自分の置かれた場所を考え、そこからどう頑張るかを考えた方がいいと言うことです。

野心をもつのは結構なことですが、心と体の健康が保たれた上でないと幸せになれないと気付かされた出来事でした。そしてさらにもう一つ私が経験した出来事を紹介します。

頑張ってもチャンスを与えてもらえない世界

「こんなに頑張っているのにどうしてなんだ?」

20代前半の頃、「手に職をつけて独立が可能」の求人に大きく魅かれた私は職人の世界に飛び込みました。

早い人は3年で仕事を覚えて独立出来ると親方に言われ、「よし、俺もさっさと仕事を覚えて独立してやる」と意気込んだのですが、現実はとても厳しい物でした。

簡単な仕事しかさせてもらえませんでした。

石の上にも3年という言葉がありますが、3年経っても5年経っても大事な仕事は任せてもらえなかったです。

多くの仲間がチャンスを与えてほしいと心の中で思っている職場では、「頑張っているから」「努力しているから」だけではチャンスは貰えません。

キラリと光るセンスをアピール出来ないといつまでたってもチャンスは貰えません。

そうでない人がいくら努力しようと長年同じ職場にいようと状況は一向に変わらない空気があります。

そして、いつまでたっても置かれた場所で咲けないと言う苦しみに耐えられなくなり多くの人達がリタイアしていく姿を見てきました。

もちろんキラリと光るセンスを上手くアピールして一人前の職人に成長していった人達も近くで見てきました。しかし、そんな人達は100人に一人ほどでしょうか?

つまり、私が求人で見た「手に職をつけて独立可能」というのは、あくまでもほんの一握りの人にだけ可能と言う意味でした。

そんな厳しいチャンスの奪い合いの世界で、我関せず幸せにやっている年配の職人さんがいました。

仕事に対してガツガツしていない職人

みんなから、「おっちゃん」と呼ばれていたその人と一緒に仕事をしたことがあります。おっちゃんの年は50代後半でしょうか?

20代の私達がどうせやるなら独立を・・・と考えているのに対して、おっちゃんは日々の仕事で汗を出して、終わったらビールを飲んで、それで幸せだというタイプでした。

つまり、私達と違って全く仕事に対してガツガツしていませんでした。現場の責任者から「とりあえず、おっちゃんにはこれをしてもらおう」と言うノリで簡単な仕事ばかり振られても、楽しく仕事をしていました。

そんなおっちゃんは、休憩時間、缶コーヒーを飲みながら私に言いました。

「こんないい仕事は他にないよ」と。

このおっちゃんの言葉を聞いて若い頃の私は思いました。「あーーあ、この人ってもう上を目指すとかに興味がないんだな」と。

おっちゃんに対して残念な印象をその時はもちました。しかし、あれから20年が過ぎ、今思うことは・・・・

おっちゃんは組織の中で楽に生きることを知っていた。

おっちゃんは、難しい仕事は出来ないけれど、みんなから尊敬を集める凄腕の職人達と同じぐらい人望がありました。

腕は一流とは言えない職人でしたが、自分の立ち位置を良く理解した上で決して自分の器以上にガツガツしないその姿はまさに・・・

無駄な力の抜けたような、それでいてしっかりと組織の中で自分の根を深く張ったような強さを感じました。

これらの経験から思うことは・・・

ガツガツした姿勢を見せれば見せるほど多くの仕事が与えられ、向上心を維持出来ないレベルになったはりきり君。

そして、どんなに頑張ってもチャンスを貰えないというストレスで職場からリタイアする人。

そして、そんな職場で、上手く肩の力を抜いて仕事と人生を楽しむおっちゃん。

働く上で、向上心をもつのは素晴らしい事ですが、置かれた状況と自分の器を考えた上でほどほどにしないと、その向上心は薬になるどころか毒にもなるということを、これらの人達は教えてくれました。

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