「責任はわしが取る」田中角栄ばりの男気を上司に求めてはいけない。自分を守れるのは自分だけである

責任はわしが取る

1962年、44歳で大蔵大臣に就任した田中角栄さんが、官僚たちの前でした就任演説は、名演説として、あまりにも有名です。

「私が田中角栄だ。尋常小学校高等科卒業である。諸君は日本中の秀才であり、財政金融の専門家ぞろいだ。私は素人だが、トゲの多い門松をたくさんくぐってきて、いささか仕事のコツを知っている」

「一緒に仕事をするには互いによく知り合うことが大切だ。われと思わんものは誰でも遠慮なく大臣室にきてほしい。なんでも言ってくれ。上司の許可を得る必要はない」

「出来ることはやる。出来ないことはやらない。しかし、すべての責任はこの田中角栄が背負う。以上!」

かっこいい。男として素直にそう思います。こんな上司のもとで働けたら幸せ。「よし、思いっきりやってやるぞ」と腹の底から力が湧いてきそうです。

しかし、「責任は俺が取る。お前たちは思い切ってやれ」そう言ってくれる上司が今どれだけいるでしょうか?

転職回数9回以上の私ですが、ほとんどあったことがありません。どちらかと言えばこのようなタイプの上司の方が多かったと思います。

守ってくれない上司

  • 「自分の失敗は部下の責任である。部下の手柄は自分の実績である」と思っている
  • クレーム・トラブルは、下の者の仕事と思い、遠くから状況を眺める。もしくは逃げる。
  • 自分が悪くても頭を下げる必要はない。それが上司の威厳だと思っている。

このような上司ばかりを見てきて思ったことは、会社や上司は守ってくれない。期待しても無駄骨に終わるということです。

では、なぜこのような上司が多いのでしょうか?

守ってくれない上司の心理

  • 上司も人間であり、トラブルに巻き込まれるのは面倒だと思っている。
  • 部下が勝手にやったこと。自分のミスではない。自分には関係ないと思っている。
  • 全ては自己責任という考え。部下の自己責任ばかりを問い、自らの管理責任は問わない。

これでは何のための上司なのか?と愕然としますが、会社や上司に過度に期待をすると、現実とのギャップに苦しむだけだと思います。

今回は私が経験した守ってくれない上司の話をして、最後に「会社や上司は守ってくれない」と愚痴るだけではなく、ではどうすれば、守ってくれない上司から自分を守ることが出来るのか?と言うことをお伝えしたいと思います。

お客様都合による返品は断れ

勤め先の食品スーパーでの出来事です。もうずいぶん前のことになりますが、会社の決定事項で、今まではレシートと現物があればすんなりと受けていたお客様都合による返品が一切受けられなくなりました。

お客様の都合というのは、買い間違いや、やっぱりいらなくなったという都合です。買い物は契約です。売買契約というものは、後になって一方的に破棄することが出来ません。

書面での契約ではありませんが、レジを通した時点で契約は成立しています。なので店側は返品をお断りすることが出来ます。

そして、でかでかと「お客様のご都合による返品・交換は一切受け付けられません」の張り紙が店内に掲示されました。

今まで、出来ていたことが出来なくなりました。私たちは、このことにとても不安な気持ちになりました。「そんなことをして大丈夫なのか?」と、その不安は的中しました。

現場は大混乱

買い物は契約であり、法律でも返品を受ける義務が店にはありません。しかし、そのことを知っているお客様は少ないです。返品は当たり前と思われていました。

  • 「今まで、返品してくれていたのにどうして?」
  • 「ちょっと買い間違いしただけじゃないの?」
  • 「いらなくなったんだから仕方がないでしょ?」

お客様にどう言われても、会社が決めたことに従わざる負えません。私たちは泣く泣く、お客様の返品を毅然とした態度でお断りしました。

もちろん、「申し訳ないことですが」の気持ちは前面に出しました。そして現場は大混乱。さらに本部も大混乱になりました。

本部の大混乱

店で返品を断られたお客様の中には、本部にクレームを入れる人が出てきました。

  • 「なんてひどい対応なの?」
  • 「そんなことで客商売が成り立つと思っているの?」
  • 「もう、二度とあんなところで買い物はしないよ」

本部の上司は電話の対応に追われたそうです。そして、この混乱の原因は店側の対応にあるのではないかと言うことになりました。

「状況を考えろ」と言われた私たち

私たちの店でお断りしたお客様も、本部にクレームを入れたそうです。そのことで、店長が、本部の上司に叱られました。

  • 「お客様の都合による返品を断れというのは基本だが、何がなんでも断るというのは、あまりにも不親切ではないか?」
  • 「例えばご年配のお客様が見間違って購入することもあるだろう。そんなお客様にかたくなな態度をとるのは問題だろ?」
  • 「そして、断るにしても、お客様を怒らせないように、対応するのが接客業だ」

私たちは、お客様に対して、申し訳ない気持ちを出しているのですが、それを否定されました。申し訳ないという気持ちが本当の意味で伝わっていないからクレームになるということでした。

本部にクレームが入るということは私たちの対応が間違っているということで、お客様のおっしゃることはもっともだという考えでした。

とても、残念な気持ちになりました。会社から「自己都合での返品は一切断れ」と言われてしたことなのに、今度は柔軟に状況を考えろになったのです。

「毅然としろ」「柔軟な対応をしろ」どっちを現場は優先する?

結局、申し訳ない気持ちで返品を断っても、お客様は本部にクレームを入れてきます。それに対して上司はお客様の言葉だけを信じて部下の言葉は信じません。

こんな状態では、毅然とした対応をするのはばかばかしくなります。店の張り紙では、「お客様のご都合による返品は一切お受けできません」と書かれていますが、結局、柔軟な対応をした方がいいという気持ちになりました。

返品をお断りして、その場では素直に聞いてくれていたと思われているお客様も、後になり、怒りがこみ上げ、本部にクレームを入れるかもしれません。

そんなリスクを考えると、とてもではありませんが、会社が決めた「自己都合による返品を一切お断りする」という姿勢を持つことは出来ませんでした。

結局、以前と同じように、私たちは返品に対しては柔軟な対応をするようになりました。

「責任は俺が取る」を上司に期待してはいけない

いかがでしたでしょうか?会社の理想とする形と、現場でおきる現実にはギャップがあります。上司が決定したことを部下が言い負かしても怒りを買うだけでしょう。

「責任は俺が取る」という姿勢の上司のもとでは部下は思い切って行動をすることが出来ます。そうでなければ出来ません。

「責任は俺が取る」という気持ちを上司に期待できないということは、上司の気持ちの中に、「逃げ」と言うものがあります。

面倒なことに巻き込まれたくないという「逃げの気持ち」です。このような場合は、柔軟な対応をしても、後で何とでも柔軟に報告をすることが出来ます。

「後で、大きなクレームになるのは目に見えていたからです」と。それで上司は納得です。上司が守ってくれない。現実によくあることですが、柔軟な考えで自分を守ることが出来るのです。